大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 昭和57年(ワ)134号 判決 1987年3月31日

原告

佐藤等

佐藤サツキ

原告

山本太四郎

山本文子

原告ら訴訟代理人弁護士

佐伯剛

陶山圭之輔

宮代洋一

被告

望月英勝

被告

望月嘉三郎

右被告両名訴訟代理人弁護士

河野光男

右訴訟復代理人弁護士

河野富一

杉山利朗

被告

右代表者法務大臣

遠藤要

被告

静岡県

右代表者知事

斉藤滋与史

被告国及び同静岡県指定代理人

芝田俊文

外三名

被告国指定代理人

苗村滋克

外五名

被告静岡県訴訟代理人弁護士

御宿和男

被告静岡県指定代理人

小野田禎市郎

外三名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

(当事者の求めた裁判)

第一  請求の趣旨

一  被告らは連帯して

1 原告佐藤等・同佐藤サツキに対し、各金二三二四万一〇六〇円及びこれに対する昭和五六年三月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を

2 原告山本太四郎・同山本文子に対し、各金二三八〇万五八七八円及びこれに対する昭和五六年三月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を

それぞれ支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  仮執行宣言

第二  請求の趣旨に対する答弁

一  被告望月英勝及び同望月嘉三郎

主文同旨

二  被告国及び同静岡県

1 主文同旨

2 仮に仮執行宣言が付される場合には、担保を条件とする仮執行免脱の宣言

(当事者の主張)

第一  請求原因

一  事故の発生等

訴外佐藤正一(昭和二九年九月二五日生・当時二六歳)は、原告佐藤等及び同佐藤サツキの長男であり、訴外山本高弘(昭和三二年一二月四日生・当時二三歳)は、原告山本太四郎及び同山本文子の三男であるところ、右訴外人らは、昭和五六年三月二二日午後三時頃、静岡県富士郡芝川町長貫付近の一級河川富士川において、ゴムボートで友人醍醐和男及び野田英見と共に川下りをしているうち、川に仕掛けてあつた訴外深沢安章(以下単に「訴外深沢」という。)所有のもじり(以下「本件もじり」という。)の中に押し流されて溺死する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

二  被告望月英勝及び同望月嘉三郎(以下単に「被告望月両名」ということがある。)の責任原因

1 本件もじり設置の共同性

訴外深沢及び被告望月両名は、富士川の本件事故現場付近において、ワイヤーロープを川面に張り渡し、右ロープにもじり網を吹き流しのように設置し、上流から流されてもじり網内に入つた川魚を捕獲する、いわゆるもじり漁を行つていたが、その態様は、同人らが暗黙の了解の下に一定の範囲を各人の縄張り的なものとして決め、互いに協力し合いながらもじりの設置・引き上げ、魚の採取及び漁獲物の分配をしていたものであつて、本件もじりも、同人らが共同して設置していたものということができる。

すなわち、同人らのもじりは、これを設置するのに一個につき五本のロープを必要とし、これを引き上げる場合も巻き取り機を使用しなければならないなど、その大きさ・長さ・重量・数量からして到底一人で操作することはできない。また、これを運搬するにしても、人力では無理であつて、トラックで運ばなければならない。更に、もじり網自体は各自の所有に属するとしても、これらに使用する巻き取り機は被告望月英勝の所有であり、ワイヤーロープは被告望月嘉三郎の所有である。そして、これらの道具を一体的に利用して、もじり漁が行われていたのであるから、右三名が主観的にも客観的にも共同してもじりを設置していたことは明らかである。

2 民法第七〇九条、第七一九条に基づく責任

訴外深沢所有の本件もじり網は、全長四・九メートル、口径一・八メートルもあつて、大人でも簡単に入つてしまう大型のものであり、一旦入つてしまえば水圧により脱出は不可能な、危険なものである。このような大型のもじり網を設置し、これを固定するためにワイヤーロープを川面に張り渡せば、川下りなど河川を自由に利用して川遊びをする者がワイヤーロープに引つ掛かり、もじり網の中に押し流されて溺死する等の危険性があることは、明らかである。

訴外深沢及び被告望月両名は、かかる危険性を十分認識しており、事故の発生を回避しようと思えば、もじり網の設置を夜間に限るとか、設置場所周辺に標識を立てるとか、口径を小さくする等、容易にその措置を採りえたにもかかわらず、かかる措置を全く講じないままもじり網を設置し、本件事故を惹起させた。

よつて、被告望月両名は、民法第七〇九条、第七一九条の規定により、後記損害を賠償すべき責任がある。

3 民法第七一七条、第七一九条に基づく責任

(一) 本件もじりの工作物性について

本件もじりは、土地に接着して人工的作為を加えることによつて成立した物である。すなわち、その仕掛けは、前記もじり網のほかに、五・四メートルの木柱(おつたて棒と称する。)、六メートルの竹柱(おつたて棒の支柱であつて、受け竿と称する。)、ワイヤーロープ六本(径八ミリ・長さ八五メートル余の本綱、径一〇ミリ・長さ三一メートルの上げ綱(寄せ綱ともいう。)、径一〇ミリ・長さ不明の張り綱、長さ九・五メートル・径不明のなべ綱三本)、上げ綱・本綱及び張り綱を引つ張るための巻き取り機二個等から成り、これらは、河原の広範囲にわたり大きな岩や石で固着され、一部はコンクリートで岩に固着させた鉄製のフックにワイヤーロープで結び付けてあり、これら固定された部分は一年中そのままにされていた。その強度・構造及び占有範囲からみて、本件もじりは土地の工作物ということができる。

(二) 設置及び保存の瑕疵について

(1) 本件もじり網は、前述のとおり、人が簡単に入つてしまうほど大型のものであり、それ自体危険なものである。

(2) 本件もじりに使用されているワイヤーロープは、長いものでは八五メートルもあり、その端部を河川敷に固着して川面に張り渡されており、河川の自由使用を著しく妨げるとともに、釣り人や川遊びをする人が、それにつまずいて転倒する危険も高い。

(3) このように危険な本件もじりを設置するには、もじり網を仕掛ける時間帯を夜間に限るとか、標識を立てるとか、もじり網の口元に人が入れないような工夫をする等、人がその中に押し流されて溺死するような事態を回避すべき措置を講ずるべきである。

しかるに、本件もじりについては、かかる措置が講じられていなかつたのであるから、本件もじりの設置及び保存には瑕疵があつたというべきであり、そのために、本件事故が惹起された。

(三) よつて、被告望月両名は、民法第七一七条、第七一九条の規定により、後記損害を賠償すべき責任がある。

三  被告国の責任原因

1 訴外深沢らの河川法違反

(一) 河川法第二六条関係

河川法第二六条は、河川区域内における工作物の新築等が、河川における一般の自由使用を妨げ、又は洪水に際して河川の機能を減殺する等のおそれがあることに鑑み、河川の使用関係を調整し、社会公共の秩序に障害を及ぼすのを防止するため、これを河川管理者の許可にかからせたものであるところ、本件もじりは、さきに主張したような仕掛けから成り、河川における一般の自由使用を妨げるものであつて、同条にいう工作物にあたるから、これを設置するには、同条の許可を受けるべきであつた。

(二) 河川法第二四条関係

訴外深沢及び被告望月両名は、数一〇メートル余のワイヤーロープを本件事故現場付近に張りめぐらすなどして、河川敷を排他的に占用していた。すなわち、右ワイヤーロープは、一年中設置されており、しかも岩や石に固着されていて容易に移動できず、河川の自由使用を妨げるものであつた。したがつて、同人らは、河川法第二四条の占用許可も受けるべきであつた。

(三) しかるに、訴外深沢及び被告望月両名は、いずれの許可も受けていない。

2 国家賠償法第二条第一項に基づく責任

(一) 被告国の機関である建設大臣は、河川法第九条第一項の規定により、一級河川である富士川を管理するものであり、かつ、同法第九条第二項、同法施行令第二条の規定により、区間を指定して県知事に対しいわゆる機関委任事務としてその管理の一部を行わせているものであるところ、本件事故現場付近は富士川の下流部にあたり、建設大臣の直轄管理区間であるから、河川の管理者として、河川法第二四条、第二六条に基づき、河川の不法占用・不法な工作物の新築等河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為を禁止、制限する権限を有するとともに、訴外深沢らのもじりについていえば、それによる危険防止のため、直ちに河川法第七五条の監督処分を発動して、同人らに対し、もじりの撤去ないし夜間のみの使用あるいは標識の設置等を命ずるなり、被告国みずから安全措置を講ずるなどして、事故の発生を未然に防止すべき義務があつた。

(二) しかるに、管理者である建設大臣及びその所部の職員は、河川法第二六条所定の工作物にあたる訴外深沢らのもじりが設置され、河川区域内の土地が占用されているのを、長期間にわたつて漫然と放置し、何らの措置も講じなかつたのであるから、その河川管理に瑕疵があることは明らかである。

よつて、被告国は、国家賠償法第二条第一項の規定により、後記損害を賠償すべき責任がある。

3 国家賠償法第一条第一項に基づく責任

富士川の河川管理者たる建設大臣は、河川法第一条の規定により、災害の発生防止、河川の適正利用及び流水の正常な機能維持ができるよう、これを管理すべき義務があり、これに基づいて、所轄の関東地方建設局甲府工事事務所の職員も、一日一回の割合で直轄河川の巡視をしていたから、これにより、本件もじりの設置が河川法第二四条、第二六条に違反するものであることは、容易に知りえたはずである。

したがつて、建設大臣は、河川法第七五条の規定により、違法行為の中止命令・違法工作物の除去・原状回復命令を発することにより、違法状態を除去すべきであつたにもかかわらず、本件事故に至るまで何らの措置も講じていない。これは、被告国の機関である河川管理者の故意又は過失による違法な任務懈怠であり、右懈怠により、本件事故は惹起された。

よつて、被告国は、国家賠償法第一条第一項の規定により、後記損害を賠償すべき責任がある。

四  被告静岡県の責任原因

1 国家賠償法第一条第一項に基づく責任

静岡県内水面漁業調整規則(以下「調整規則」ということがある。)第五条の規定によれば、本件もじりのような漁具によつて水産動植物を採捕するには、知事の許可を受けなければならない。右条項に違反した者は、同規則第三四条の規定により、懲役又は(及び)罰金に処せられ、右違反に係る漁獲物・その製品・漁具等は没収されうることになつている。右規則によれば、知事が直接違反漁具類を撤去できる旨の規定はないけれども、右規則の実効をあげるため、知事は、違反者に対して注意・警告をし、違反物の撤去を求める権限を有するものというべく、また、刑罰権の発動を促すため告訴告発等もなしうるものである。更に、同知事が、もじり漁法を健全に、かつ、危険性のないものとして発展させるつもりであるならば、調整規則に基づいて正式に許可を与え、山梨県と同様、夜間のみ漁をするようにするとか、もじりの大きさについてもある程度規制するとか、標識を立てる等の許可条件を定めて、もじり漁法のルールを確定しうる権限をもつていた。

しかるに、同知事は、訴外深沢及び被告望月両名が長年にわたり無許可でもじり漁法を行つているのを知りながら、漫然これを黙認して取締らず、放置していた。

ところで、行政の裁量権限の行使が被害者の損害を回避するため適切な方法のひとつであり、行政がたやすくその方法を採ることができ、しかも被害者がそれを期待することが客観的事情から已むをえないと認められる場合には、行政の裁量権限の不行使は、一般的に違法というべきであつて、右権限の行使が被害者個人に対する義務であることを必要としない。

これを本件についてみれば、静岡県知事は違法なもじり漁法を容易にやめさせ、漁具の撤去を求め、許可条件を定めることができたのであるから、これを怠り、本件無許可漁業について何らの権限も行使しなかつたのは違法というべきであり、これによつて、本件事故は惹起された。

よつて、被告静岡県は、国家賠償法第一条第一項の規定により、後記損害を賠償すべき義務がある。

2 国家賠償法第三条第一項に基づく責任

(一) 被告静岡県は、河川法第六〇条第一項の規定により、その区域内における富士川の管理費用を一部負担している。

(二) 国家賠償法第一条又は第二条の規定により被告国が原告らに対して後記損害を賠償すべき責に任ずることは、前記請求原因三記載のとおりである。

よつて、被告静岡県は、国家賠償法第三条第一項の規定により、後記損害を賠償すべき義務がある。

五  損害

1 原告佐藤等及び同佐藤サツキ(以下単に「原告佐藤ら」という。)の損害 各金二三二四万一〇六〇円

(一) 亡佐藤正一の損害

(1) 逸失利益 金二一八八万二一二〇円

佐藤正一は、死亡当時満二六歳の頑健な青年で、訴外藤久工業株式会社に勤務し、一か月平均金一六万六〇〇〇円の賃金の支払を受けていた。同人は、本件事故に遭遇しなければ、少なくとも満六七歳まで就労可能であつた。そうすると、佐藤正一の逸失利益は、年収からその五〇パーセントを生活費として控除したものに新ホフマン係数二一・九七を乗じた金二一八八万二一二〇円となる。

(算式)

16万6000円×12×0.5×21.97=2188万2120円

(2) 慰藉料 金一〇〇〇万円

佐藤正一は、仕事のかたわら、急流下りに関するアドベンチャークラブ誌を編集し、学生時代からやつていたゴムボートによる急流下りを唯一の趣味としており、急流下りについては日本でも有数の技倆の持ち主であり、若者の間では有名であつた。

同人は、青春を謳歌する半ばにおいて本件事故に遭遇して死亡したものであり、その悔恨の情いかばかりであるか想像に難くないところであつて、この慰藉料は金一〇〇〇万円をもつて相当である。

原告佐藤らは、佐藤正一の死亡により、その父母として前記(1)(2)の損害賠償請求権を各二分の一ずつ相続した。

(二) 原告佐藤らの直接的損害

(1)  慰藉料 各金五〇〇万円

原告佐藤らは、本件事故により最愛の一人息子を失い、その精神的苦痛は筆舌に尽し難いものであり、これを慰藉するには少なくとも各金五〇〇万円が相当である。

(2)  葬祭費 各金三〇万円

原告佐藤らは、葬祭費として金六〇万円以上を出捐しているが、金六〇万円をもつて相当とし、原告佐藤らはそれぞれその二分の一の損害を被つた。

(3)  弁護士費用 各金二〇〇万円

原告佐藤らは、前記各損害の合計額各金二一二四万一〇六〇円の損害賠償を求めるため、本件訴訟を弁護士佐伯剛・同陶山圭之輔・同宮代洋一に委任し、その費用として各金二〇〇万円を支払う旨約した。右費用は本件事故と相当因果関係にある損害である。

以上のとおり、原告佐藤らの本件事故による損害額は、各金二三二四万一〇六〇円となる。

2 原告山本太四郎及び同山本文子(以下単に「原告山本ら」という。)の損害 各金二三八〇万五八七八円

(一)  亡山本高弘の損害

(1)  逸失利益 金二三〇一万一七五七円

山本高弘は、死亡当時満二三歳の健康な青年で、訴外日本ヒーター株式会社に勤務し、一か月平均金一六万七三一二円の賃金の支払を受けていた。同人は、本件事故に遭遇しなければ、少なくとも満六七歳まで就労が可能であつたものである。そうすると、山本高弘の逸失利益は、年収からその五〇パーセントを生活費として控除したものに新ホフマン係数二二・九二三を乗じた金二三〇一万一七五七円となる。

(算式)

16万7312円×12×0.5×22.923=2301万1757円

(2) 慰藉料 金一〇〇〇万円

山本高弘も、前記佐藤正一と同様、仕事のかたわら急流下りを唯一の趣味として楽しんでいたものであるが、本件事故により有為なる前途を絶たれ、その無念さ悔しさはいかばかりであるか、容易に推測できるところであつて、この慰藉料は佐藤正一と同様金一〇〇〇万円をもつて相当である。

原告山本らは、山本高弘の死亡により、その父母として前記(1)(2)の損害賠償請求権を各二分の一ずつ相続した(なお、小数点以下を切り捨てたので、各金一六五〇万五八七八円となる。)。

(二) 原告山本らの直接的損害

(1)  慰藉料 各金五〇〇万円

原告山本らは、本件事故により最愛の息子を失い、その精神的苦痛は筆舌に尽し難いものであり、これを慰藉するには少なくとも各金五〇〇万円が相当である。

(2)  葬祭費 各金三〇万円

原告山本らの葬祭費も、原告佐藤らと同様各金三〇万円をもつて相当である。

(3)  弁護士費用 各金二〇〇万円

原告山本らは、前記各損害の合計額各金二一八〇万五八七八円の損害賠償を求めるため、本件訴訟を弁護士佐伯剛・同陶山圭之輔・同宮代洋一に委任し、その費用として各金二〇〇万円を支払う旨約した。右費用は本件事故と相当因果関係にある損害である。

以上のとおり、原告山本らの本件事故による損害額は、各金二三八〇万五八七八円となる。

六 よつて、被告望月英勝及び同望月嘉三郎に対しては、民法第七〇九条、第七一九条又は同法第七一七条、第七一九条に基づき(選択的に主張する。)、被告国に対しては、主位的に国家賠償法第二条第一項、予備的に同法第一条第一項に基づき、被告静岡県に対しては、主位的に同法第一条第一項、予備的に同法第三条第一項に基づいて、原告佐藤等及び同佐藤サツキはそれぞれ金二三二四万一〇六〇円、原告山本太四郎及び同山本文子はそれぞれ金二三八〇万五八七八円並びに右各金員に対する本件事故発生の日である昭和五六年三月二二日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第二 請求原因に対する認否及び反論

〔被告望月英勝及び同望月嘉三郎〕

一 請求原因一は知らない。

二 同二について

1 同二1の事実中、訴外深沢及び被告望月両名が、富士川の本件事故現場付近において、ワイヤーロープを川面に張り渡し、右ロープにもじり網を吹き流しのように設置し、上流から流されてもじり網内に入つた川魚を捕獲する、いわゆるもじり漁を行つていたこと、被告望月英勝所有の巻き取り機及び被告望月嘉三郎所有のワイヤーロープが、それぞれ同人らのもじりに使用されていたことは認めるが、その余の事実は否認もしくは争う。

訴外深沢及び被告望月両名のもじり設置の状況は、別紙図面一記載のとおりである。まず、その設置場所についてみると、最初訴外深沢が中洲と西側の河原との間にもじりを設置し、その後被告望月英勝が、その直接下流では漁獲が得られないのでこれを避け、中洲の東側の流れを下る魚を獲る狙いで設置場所を定め、更に被告望月嘉三郎が、一番東側の流れを下る魚を獲るため、東側の河原にもじりを設置することとなつたが、各人の設置場所は、このような自然の経過から偶々そうなつたに過ぎず、三人了解のうえで縄張り的なものとして決定されたのではない。

また、同人らのもじりは、各人の判断によりそれぞれ別個独立に、時に応じて流水中に仕掛けられるものであつて、三人が協力し合つてもじりの設置・引き上げ、魚の採取及び魚獲物の分配をしたことは、かつて一度たりともない。更に、被告望月英勝の巻き取り機は、同人のもじり網を巻き上げるためにのみ使用され、これが訴外深沢のもじりのために利用されたことは全くない。また、被告望月嘉三郎のワイヤーロープは、同人のもじりを設置するためにのみ存在し、これを訴外深沢が流用したことは絶対にない。

このように、訴外深沢及び被告望月両名は、三者三様別個独立に、それぞれのもじり漁を余暇を利用して営んでいたのであつて、そこには実際何らの共同的要素も見当らないのである。

仮に百歩を譲り、何年か前被告望月両名がもじりの鉄製部分の製作を訴外深沢に依頼したことがあり(偶々同人が鉄工所を営んでいたため)、また、過去幾度か偶然河原で出会つて互いにもじり網の上げ下げを手伝つた経緯が認められるとしても、このような瑣事が、本件事故発生の際における訴外深沢の具体的もじり設置行為と客観的に関連共同するものとは言いうべくもない。

2 請求原因二2は、否認する。

訴外深沢所有のもじり設置につき、被告望月両名が共同関係になかつたことは、既に主張したとおりであり、また、被告望月両名のもじり設置と本件被害者の死との間には何の因果関係も存在しない。

3 同二3は、否認もしくは争う。

もじり網自体は勿論のこと、これを上げ下げするためワイヤーロープを河床に固定する仕掛けも、土地の工作物には該らない。もじりの所有者たる設置者に無過失責任を負担させなければならない必然性は、全くない。

仮にもじりが一般論としては土地の工作物に該当するとしても、被告望月両名は、本件もじりの占有者でも所有者でもない。本件もじりは、訴外深沢ひとりの所有占有にかかるものである。

三 請求原因五は知らない。

〔被告国〕

一 請求原因一のうち、佐藤正一及び山本高弘が原告ら主張の日時・場所において死亡したこと及び本件事故当時その現場付近の富士川にもじりが存在したことは認めるが、その余の事実は知らない。

二 請求原因三について

1 同1のうち、(三)の事実は認めるが、その余はすべて争う。

(一) 河川法第二六条は、工作物の新築等が河川における一般使用を妨げ、又は洪水に際して河川の機能を減殺するなどのおそれのあるので、河川の使用関係を調整し、社会秩序に障害を及ぼさないよう、法律によつてこれらの行為を一般的に禁止し、河川管理上支障がなければ、右禁止を解除し、河川の使用を許容する規定であるところ、本件もじり網は、単なる竹製の漁具にすぎず、その構造からして流水の疎通を著しく妨げるものではないこと、原始的漁法として古くから伝統的に営まれてきたこと、更には河川の自由使用としての利用形態であることなどから考えると、河川法第二六条の許可を要しないものである。

ところで、原告らは、本件もじりの仕掛けには、もじり網のほかワイヤーロープや木柱なども含まれ、ワイヤーロープは河原の岩や石に鉄製のフックで固着されていることを理由に、もじり全体が河川法第二六条でいう工作物であると主張する。しかしながら、本件もじり網自体は材質が竹製であり、流水の疎通を著しく妨げるものではなく、移動性が極めて高く、取り外して簡易に動かすことが可能であること、もじり漁は晩秋から春先にかけて慣習的に行われてきたものであり、年間を通じて設置されているものではないし、一日のうちでも、もじりを夕方に仕掛けて翌朝に引き上げる方法が一般的であり、もじりの仕掛けが土地に固定されているものとはいえないこと、また、フックがもじりの設置に不可欠のものということもできないことなどに照らすと、本件もじりが河川法第二六条の工作物に該当しないことは明らかである。

更に、本件もじりの設置が河川法第二六条の許可の対象外であるという点については、本件もじりを仕掛けることは、もじりという漁具を固定することにすぎず、同法第二六条でいう新築、改築にあたらないということからも明らかである。

(二) 河川法第二四条の許可は、河川区域内の土地について、継続的・排他的に土地を占用する特別の使用権を設定するもので、いわゆる講学上の「特許」にあたるが、これに対し、本件もじりは、漁期中一時的にこれを設置し使用後は回収するもので、河川の自由使用とみるべきであり、同法第二四条の許可を要しないものである。

すなわち、本件もじりが河川法第二六条の許可の対象ではなく、自由使用であることについては既に述べたとおりであり、もじりの仕掛けは、同法第二六条でいう工作物でなく、しかも、同条でいう新築、改築にもあたらず、いわばもじりは漁具の範囲を出ないものとして取り扱われているものである。また、本件もじりを仕掛ける時期は、魚類の行動の鈍る晩秋から春先にかけてであり、一日のうちでも、もじり網を夕方仕掛けて翌朝に引き上げるといつた方法が一般的に採られ、その都度ビクに獲れた魚類を回収するというものである。これらのことからも明らかなように、本件もじりは極めて移動性が高く、河川法第二四条にいう許可の対象となる占用とまではいえない。

なお、原告らは、ワイヤーロープは一年中設置され、容易に移動できない旨主張するが、もじり漁の漁期以外で、もじり網がワイヤーロープと結び付いておらずにワイヤーロープのみが岩に結び付けられた状態が、同法第二四条の占用許可の対象にならないことは明らかである。また、もじり網が一年中ワイヤーロープによつて固定されている事実もないのである。

以上のとおり、本件もじりの設置は、河川法第二四条で許可すべき占用にはあたらず、自由使用の範囲内であることは明らかである。

2 請求原因三2について

(一) 同(一)のうち、河川法上、建設大臣は、一級河川である富士川の管理者であり、ことに本件事故現場付近を直接に管理する者として、一般に同法第二四条・第二六条及び第七五条所定の権限をすることは認めるが、その余は争う。

(二) 同(二)は、否認ないし争う。

訴外深沢らがもじりを設置するのに、河川法第二四条・第二六条の許可を要しないことは、さきに主張したとおりであるから、これが必要であることを前提とする原告らの主張は、既にこの点において失当である。

そもそも、河川は、公共用地として一般公衆の用に供することを目的とするものであるから、使用者は、河川管理者の許可その他の行為を要しないで、自由に使用することができることをその本質とするものであり、これに対して、河川管理者は、当該河川使用の目的、性質に応じて、河川法の定めるところに従い、河川管理上必要な限度でのみその範囲や方法を限定することができるにすぎない。言い換えれば、河川は、河川法の規定によつて禁止又は調整されない限り、原則として自由にこれを使用することができるのであつて、人々の生活と密接に結びついた利用形態たる水浴、洗濯、魚取り、ボート遊び、舟運等はその例である。これを本件についてみると、もじり漁は原始的漁法であつて、うげ漁の一形態として、狩野川中流域や本件富士川において、人類が河川とのかかわり合いを持つた頃から伝統的に自由に行われてきた、河川の慣行的利用形態である。したがつて、本件もじり漁は、亡佐藤正一らのボートによる川下りと同様、河川の自由使用であり、河川法上何ら許可を要しない行為である。

しかして、このような河川の自由使用であつても、その利用行為に伴つて様々な危険が生じることは、通常予想しうるところであるが、そうした危険が自由使用に委ねられた利用行為から発生するものである場合にあつては、利用者自身又は利用者相互の協力、配慮によつて危険ないし事故の発生を防止すべき義務を負うものであり、かかる利用行為自体は、河川管理者と利用者間の関係を規律する拘束を離れ、河川管理の対象とならないのである。

3 請求原因三3は争う。

河川法第一条は、同法の目的を抽象的に規定したものにすぎず、いわば同法の基本的な思想ないし考え方を宣言したものというべき規定であるから、河川管理者の具体的な職務権限は、右規定から直ちに発生するものではなく、同法の個別的な規定により具体的に定められたところに従つて発生し、行使されるべきものである。

したがつて、河川管理者には河川法第一条に基づき本件もじりを撤去すべき義務はなく、しかも本件もじりの設置は前記のように河川の自由使用の一形態にすぎないのであつて、同法による許可を必要としないものであるから、河川管理者に違法な任務懈怠があつたとする原告らの主張は、その前提を欠き理由がない。

三 請求原因五については、不知もしくは争う。

〔被告静岡県〕

一 請求原因一の事実に対する認否は、被告国のそれと同じである。

二 同四について

1 同1のうち、静岡県内水面漁業調整規則によれば、本件もじりのような漁具によつて水産動植物を採捕するには、知事の許可を受けなければならないこと及び訴外深沢及び被告望月両名が右許可を受けていなかつたことは認めるが、その余は否認もしくは争う。

とくに、山梨県内における富士川のうげ漁法は、富士川漁業協同組合の組合員が、同組合内共第4号第5種共同漁業権行使規則(同組合が知事の認可を受けて制定した規則)に基づいて実施しているものであるが、静岡県内における富士川においては、漁業権を免許された漁業協同組合はなく、したがつて、静岡県知事には、漁業協同組合規則を通じて漁法を規制する権限はなく、うげ漁法のルールを確立することは不可能である。なお、山梨県内の富士川において、うげ漁法を行うことができるのは、富士川漁業協同組合の組合員が、同組合の漁業権行使規則の規定に基づいて行う場合だけであり、漁協組合員以外の者に対し、内水面漁業調整規則に基づいてうげ漁法による水産動植物の採捕を許可していないことは、山梨県も静岡県と同様である。

のみならず、漁業法、水産資源保護法、本件漁業調整規則等の保護法益は、水産資源の保護培養ということ、特に、うげ漁法の禁止規定は、稚魚を含めて水産物を無差別に濫獲することを防止しようとするものであつて、これらは、川下りの事故の防止は勿論、河川の治水・利水を目的とする河川法上の河川管理とは目的を異にするものである。したがつて、静岡県知事が無許可の本件もじりを除去しなかつたからといつて本件事故に関し責任を問われる筋合ではない。

そもそも、行政庁の権限の不行使が違法であるとして、国又は地方公共団体が損害賠償義務を負う場合としては、①その前提たる行政庁の行為義務が単に行政上の義務にとどまらず被害者個人に対する義務でなければならず、②更にその権限行使の作為義務について、私人に申請権の認められている場合は別として、一般には行政庁に権限行使をするか否かについて広い裁量に委ねられているのであるから(いわゆる効果裁量)、その権限の不行使が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の濫用と認められる場合であることを要するものである。そして、権限の不行使が「裁量権の濫用」になるかどうかの判定は、不行使時における行政庁の判断について、著しく合理性を欠いていたかどうかという立場から行うべきもので、その後に惹起された結果から判断することではないこと勿論である。

右の法理を前提として考えると、本件においては、そのいずれの要件をも欠き、到底、不作為が違法とはいえないものである。

2 請求原因四2について

(一) 同2(一)の事実は認める。

(二) 同2(二)において引用する請求原因三についての認否及び反論は、被告国のそれと同じである。

三 請求原因五については、不知もしくは争う。

第三 被告国及び同静岡県の積極的主張

一 そもそも川下りは急流河川において冒険を試みるという危険性の高いレジャーであること、本件事故現場付近は、流れの急なことで知られている難所であること、加えて事故当日は前日の降雨のために流量、流速が増大し、著しく危険性が高まつていたこと、しかるに川下りのベテランである亡佐藤正一らは、十分な下見、調査をせずに無謀な行動に出たことが事故の原因である。

二1 亡佐藤正一は川下りのベテランであり、ベテランであればこそ、川下りを実行する前の計画と入念な下見が不可欠であることを認識していたはずである。それにもかかわらず、本件川下りは、芦ノ湖から富士市所在の野田英見宅に帰る途中、天気が晴れたので急に実行することとなつたという無計画なものである。

また、下見については、当日走行する自動車の中から行つたというのであるが、同人らの通つたコースでは、本件事故現場付近、釜口に入る一番危険な場所は見えず、また、車を止めて下をのぞき込むというような形で丹念に見ないと危険性は十分わからない場所が多かつたから、亡佐藤正一らの下見が不十分であつたことは明らかである。

2 また、本件事故現場は、瀬戸島付近の釜口の中であり、昭和三年以前の富士川の舟運において最大の難所だつたところでもあり、瀬戸島の西側の河道には日本軽金属の伏越があり、そこは高さ二・五メートルの滝となつて流れていたから、亡佐藤正一らが、川下りをするための下見らしい下見を実施しておれば、釜口か伏越に着目していたはずであり、また、そこで本件もじりにも気付き、川下りの範囲を縮小しえたはずである。

3 更に、本件事故当日は、前日からの降雨によつて急速に増水しており、川下りを実行するには危険が増大していた状況にあつた。本件事故当日午後三時頃の流量は、毎秒約一五〇ないし二〇〇立方メートルもあり、昭和五六年のうちでは、多い方から数えて二二番目の日に当たつていたから、かなりの出水があつたことは明らかである。

仮に亡佐藤正一がかつて一度本件事故現場付近の川下りを行つたことがあつたとしても、川下りの危険性は、当日の流量、流速によつて異なるものであるから、下見、調査を十分にしなかつたため、右のような危険性の増大を知らずに、川下りを敢行したものといわざるをえない。

4 しかも、同人らは、身体を暖めるために飲んだウイスキーで、川下り当時には適確な判断力が鈍り、大胆な行動をとつた蓋然性が高い。このことは、事故現場直前における本件ゴムボートの危険な行動からもうかがい知ることができる。すなわち、小泉正次は、本件ゴムボートの動きを目撃していたが、新内房橋を二、三メートル下つたところから右へ行けば危険な状態であるから、当然左側へ寄つて岸へ上り、危険を避けると思つたのに、急に方向転換をして、危険な方向へ漕いで行つた。また、同人は、新内房橋の真下の岸から、本件もじりはもちろんそのワイヤーロープ等までも見ており、このことから、亡佐藤正一らがボートを一旦左岸の方に寄せた時点においても、本件もじりが見えたはずである。それにもかかわらず、同人らは、あえて流れの急な方へと危険な進路を自ら選択したのであり、本件事故が同人らの無謀な行動に起因して生じたことは明らかである。

三 以上のとおり、本件事故は、亡佐藤正一らの無謀な行動によつて惹起されたものであり、河川法上許可の対象とならない河川の自由使用者相互の関係によつて生じたものであるから、本件事故の発生を河川管理の瑕疵に起因するとする原告らの主張はいずれも失当である。

なお、被告らは、右主張を予備的に過失相殺にいう被害者の過失事由として、主張するものである。

第四 被告国及び同静岡県の積極的主張に対する認否及び反論

被告らの主張は全面的に争う。

亡佐藤正一は川下りのベテランであり、富士川においてもこれまで何回か川下りをしている。同人らが行う川下りは、それ自体被告らがいう程無謀なものでもなく、危険なものでもない。

被告らは、本件事故当時における富士川の流量を云々して、川下りの危険性を強調するが、亡佐藤正一らは、当日、本件事故に遭遇するまで一度も転覆しておらず、危険な状態にもなつていなかつたのであつて、流量が多いからと言つて、直ちに危険であるとは言えないのである。流量が多いから危険であるという論理は、雪が多いからスキーをするのは危険だというのと同様、何の根拠もないものである。被告らの主張は、本件事故に対する自らの無為・無策を合理化するための責任転嫁以外の何ものでもない。

(証拠)<省略>

理由

一事故の発生等について

<証拠>によれば、請求原因一の事実を認めることができ(但し、佐藤正一及び山本高弘が原告ら主張の日時・場所において死亡したこと及び本件事故当時その現場付近の富士川にもじり網が存在したことは、原告らと被告国及び同静岡県との間においては争いがない。)、右認定に反する証拠はない。

二被告望月両名の責任について

1  請求原因二1の事実(本件もじり設置の共同性)のうち、訴外深沢及び被告望月両名が、富士川の本件事故現場付近において、ワイヤーロープを川面に張り渡し、右ロープにもじり網を吹き流しのように設置し、上流から流されてもじり網内に入つた川魚を捕獲する、いわゆるもじり漁を行つていたこと、被告望月英勝所有の巻き取り機及び被告望月嘉三郎所有のワイヤーロープが、それぞれ同人らのもじりに使用されていたことは、当事者間に争いがない。

2  右の争いのない事実に、<証拠>を総合すれば、次の各事実を認めることができる。

(一)  訴外深沢所有の本件もじり網は、別紙図面二のように、全長約四・九メートル、その入口は高さ約一・二メートル、幅約一・九三メートルの楕円形を成し、直径約三センチメートルの真竹が楕円錐状に編まれ、鉄製のパイプ(入口部)及び帯金で補強されている。すぼまつた後方の出口部には直径約一〇センチメートルのエスロンパイプがあり、これに長さ約五〇センチメートルのびくが着脱自在に取り付けられ、水流で押し込められた川魚が入るようになつている。

(二)  本件もじり網の入口両横及び天頂部には、なべ綱と呼ばれる三本のワイヤーロープが取り付けられ、右ロープはおつたて棒に接続されている。おつたて棒は、河原に立てられる長さ約五・四メートルの木柱であつて、長さ約六メートルの竹柱(受け竿)により支えられる。おつたて棒の先端に近い部分には、本綱と呼ばれる約八五メートルのワイヤーロープと、上げ綱と呼ばれる約三五メートルのワイヤーロープが取り付けられており、上げ綱の先端部にはワイヤーロープの巻き取り機(ワイヤードラム)がついている(別紙図面三参照)。そして、おつたて棒を川の流れの方向に傾けることによつて、もじり網を押し出し、流水中に吹き流しのように設置する。

(三)  被告望月両名のもじりも、右(一)、(二)とほぼ同様の形状及び仕掛けから成る(もつとも、被告望月英勝のもじりは、これを設置するのにおつたて棒・受け竿・本綱及び上げ綱を使用せず、流水をまたいで此岸の岩から彼岸の岩にワイヤーロープ(以下「張り綱」という。)を張り渡し、これにもじり網を吹き流しのように設置する。)。

(四)  訴外深沢及び被告望月両名は、それぞれ自分のもじり網は自分で作つた。ただ、もじり網を補強する前記鉄製パイプ及び帯金並びに巻き取り機については、訴外深沢の息子が鉄工所を営んでいるため、被告望月両名においても訴外深沢に注文して、同人にこれを作つてもらつた。

(五)  同人らの各もじりを構成するもじり網、ワイヤーロープ、巻き取り機等は、いずれも各人の所有にかかるものであつて、その利用も各人毎に別個になされていた。

(六)  訴外深沢は昭和四四年頃から、次いで被告望月嘉三郎が、更に被告望月英勝は昭和五二、三年頃から、それぞれ本件事故現場付近でもじり漁をするようになつたが、被告望月嘉三郎は、訴外深沢の漁の邪魔にならない場所でしかも漁獲の得られるところをもじり網の設置場所に選び、被告望月英勝も、同様の考慮をして決めた場所にもじり網を仕掛けたが、その選択は各自の判断によるものであつて、設置場所について相互に指示や話合は全くなかつた。

右設置場所は、別紙図面一のとおりであり、後記のように季節によつて多少変動することを除けば、毎年変らない。

(七)  もじり網の設置・引き上げも、各人が独自に行つていたが、被告望月英勝と訴外深沢の間においては、もじり網の設置場所が近接していたこともあり、河原でたまたま出会つた際には、互いに手伝うこともあつた。

(八)  同人らの各もじり網による漁獲物は、各人がそれぞれ持ち帰り、これを分配し合うことは全くなかつた。

以上の事実を認めることができる。

これに対して<証拠>中には、被告望月英勝所有の巻き取り機が、訴外深沢のもじりを操作するために利用されていると読み取れる記載部分があるが、分離前相被告深沢安章の本人尋問の結果によれば、右深沢は、別に自分の巻き取り機を持つていて、他人のものを使用する必要がないうえに、巻き取り機とワイヤーロープの接続の仕方が、被告望月英勝のそれと訴外深沢のそれとでは違つていたため、右のように流用することはできなかつたと認められるから、右記載内容は不正確というほかなく、信用することができない。また、訴外深沢らのもじり網がさきに認定したように大型のものであつて、一人で運搬するには困難が伴うことは、前記深沢本人尋問の結果から窺えるところであるが、被告望月英勝及び分離前相被告深沢安章の各本人尋問の結果によれば、それゆえに、訴外深沢は、その製作にかかるもじり網を息子の手を借りてトラックで河原に運び、他方、望月英勝は運搬の便を考え、設置場所付近の河原においてもじり網を製作したことが認められ、また、もじり網の設置・引き上げについては、各人が単独でなしうることが認められるから、同人らのもじり網が大型であつたとの一事から、その運搬及び設置・引き上げにつき同人らが常々協力し合つていたと推認することはできない。

3  右認定事実によれば、訴外深沢は単独で本件もじりを設置していたものというべく、これに反して、原告ら主張のように、被告望月両名が右設置につき同訴外人と共同関係にあつたと認めるに足りる証拠はない。また、同被告らが本件事故に関し共同不法行為責任を負うべきその余の原因についても、何ら主張立証がないから、訴外深沢に違法有責の行為があつたか否か、本件もじりが土地の工作物にあたるか否か等の点につき、さらに検討を進めるまでもなく、原告らの被告望月両名に対する請求はいずれも失当であり、棄却を免れない。

三被告国の責任について

1  訴外深沢らの河川法違反

訴外深沢らが、富士川の本件事故現場付近において本件もじり等を設置するにつき、河川法第二六条及び第二四条所定の許可を受けていなかつたことは、被告国の自認して争わないところであるから、証人真鍋友一及び同坂本忠彦の各証言も斟酌しつつ、同人らの右行為が河川法上右各条項に違反するものであるか否かについて検討する。

(一)  河川法第二六条は、河川区域内の土地における工作物の新築・改築及び除却が、一般に洪水・高潮等による災害を誘発助長し、河川の適正な利用を妨げ及び流水の正常な機能を維持するうえで障害になるおそれがあることに鑑み、同法第一条所定の河川管理の目的を達成するため、これらの行為を原則として禁止し、個々具体的なケースについて、河川管理上支障がないと認められるときには、河川管理者において許可を与え、一般的禁止を解除しうることとした規定である。したがつて、発電用又は農業用ダム・橋梁・堰・ポンプ場・取水塔・桟橋等が同条にいう工作物に該当することは、問題がないが、その用語につき明確な定義規定を欠くため、その外延の周辺部分においては、工作物と非工作物との境界は必ずしも明らかでない。結局、同条の立法趣旨に照らし、その構造・大きさ・重さ・形状・固定性・素材等を総合的に考察して、前記河川管理の目的を達成するためその新築・改築及び除却を原則的に禁止することが必要かつ相当と認められる有体物をいうものと解するほかない。なお、その範囲を具体的に画するに当つては、当該有体物の設置又は撤去が、言葉の通常の使用法において、「新築」「改築」又は「除却」等の表現に親しむものであること、また、同法第一三条には、「第二十六条の許可を受けて設置される工作物は、水位、流量、地形、地質その他の河川の状況及び自重、水圧その他の予想される荷重を考慮した安全な構造のものでなければならない。」と規定されていることも、考慮されなければならない。この点につき、原告らは、およそ他人の河川使用を多少なりとも妨げるような有体物は、すべて同条にいう工作物に該当する旨主張するようである。しかしながら、何らかの有体物が河川区域内の土地に存在すれば、それがどのようなものであれ、一定範囲の空間を占め、同時に同じ場所に他の有体物が存在することを許さないことから、論理的には、多かれ少かれ他人の河川使用を妨げることにならざるをえないことを考えるだけでも、かかる解釈を採りえないことは、明らかというべきである。

また、河川法第二四条は、河川区域内の土地を占用しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない旨規定するが、ここにいう許可は、対象たる土地を排他的継続的に占有使用しうる特別の使用権を設定する設権処分であつて、講学上いわゆる特許にあたる。したがつて、同条にいう占用も、前記河川管理の目的を達成するため、かかる使用権を設定することによつて、利用関係の調整を図るのを相当とする程度に、面積的にもそれなりの範囲を、時間的にもある程度の期間継続して、排他的に占有使用することを意味するものというべきである。そして、河川区域内の土地の使用であつても、この程度に至らないものは、いまだ河川の自由使用の範疇にとどまるものと解される。この点につき、原告らは、河川区域内の土地に有体物を設置するなどしてこれを使用する限り、その範囲及び期間の如何にかかわらず、広く許可を要する占用にあたる旨主張するが、かかる見解は、本来河川が直接一般公衆の使用に供される公共用物であることを軽視するものであつて、にわかに賛同することはできない。

(二) ところで、前記二2に掲げた各証拠及び証人坂本忠彦の証言によれば、次の各事実を認めることができる。

(1) 前記おつたて棒は、これに斜めに交差させた長さ約六メートルの竹柱によつて支えられ、根元は、河原にある石を並べて押さえてある。前記本綱は、河原にある石で固定された丸太に結びつけられており、また、前記巻き取り機も、やはり河原の石で押えられている。

(2) 訴外深沢は、朝夕一回ずつ本件もじり網を上げて、前記びく内に入つた獲物を取り出し(但し、水量が少ない場合は、びくだけをはずして獲物を取り出す。)、その後また仕掛けるという作業を繰り返していた。

(3) もじり網の設置期間は、毎年一〇月から翌年三月ころまでであつて、一〇月及び一一月には鰻・鮎が比較的水量の多い流れで、それ以後はズガニと呼ばれる川蟹が比較的水量の少ない浅瀬で獲れ、それに伴つて、おつたて棒及びもじり網の位置も多少異なつてくる。

(4) 訴外深沢は、本件事故当時使用していた本件もじり網とほぼ同一形状のものを毎年作りかえており、本件もじり網も、昭和五五年一〇月までに新しく作られて、仕掛けられたものである。

(5) 富士川の河原には、訴外深沢らのもじり網のほかにも、幾つか大型のもじり網が仕掛けられており、もじり漁は、富士川の急流河川としての特性を活かした伝統的漁法として晩秋から春先にかけての風物誌となつている。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(三)  しかして、前記二2及び右(二)において認定したところによれば、本件もじり網の主要な素材は竹であつて、流水を著しく妨げるものではないこと、訴外深沢らのもじり網は、毎年作りかえられ、晩秋から春先にかけて仕掛けられてきたものであつて、年間を通じて設置されているものではないこと、獲物の種類によつては仕掛ける場所も多少異なり、一日のうちでも朝方及び夕方に引きあげる方法がとられ、場所の移動を伴うこと、本件もじり網が接続されていたおつたて棒及び巻き取り機も、河原の石で押えられているだけで、土地に固着されているものでないこと等の諸事実を指摘することができるから、訴外深沢らが設置した本件もじり等は、いまだ河川法第二六条にいう工作物には該当しないものというべく、また、本件もじり等を設置していた行為も、同法第二四条にいう河川区域内の土地の占用には該当しないと解するのが相当である。したがつて、訴外深沢らが、本件事故現場付近において本件もじり等を設置するにつき、河川法上の許可を受けていなかつたからといつて、同法第二六条及び第二四条に違反するものということはできない。

2 河川管理者の職務権限

被告国の機関である建設大臣は、河川法上、一級河川である富士川を管理する者であり、ことに本件事故現場がその直轄管理区間内にあることは、被告国の自認するところであるから、原告らの主張に鑑み、河川管理者の職務権限について検討する。

(一) まず、原告らは、仮に訴外深沢らによる本件もじり等の設置行為が河川法第二六条ないし第二四条に違反しないとしても、河川管理者は、同法第一条の規定に基づき、右行為を禁止制限すべき職務権限を有する旨主張するようである。

しかしながら、河川は、本来公共用物であつて(同法第二条)、直接に一般公衆の共同使用に供することを目的とするものであるから、一般公衆は、河川管理者の許可・特許等を要しないで、自由に使用しうることを原則とする。これに対して、河川管理者は、当該河川使用の目的態様等に応じ、河川法が具体的に定めるところに従い、河川管理上必要な限度においてのみ、その範囲や方法を限定することができるにすぎない。換言すれば、河川は、同法の具体的な規定によつて禁止制限されない限り、原則として自由に使用することができるのであつて、水浴・洗濯・魚取り・ボート遊び等は、その例である。

ところで、河川法第一条は、同法の目的を定め、第二条は、河川管理が第一条所定の目的が達成されるように適正に行われなければならない旨定める。結局これらの規定によれば、河川管理は、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、及び流水の正常な機能が維持されるように、これを総合的に遂行すべきことが要請される。しかし、これは、河川管理の原則を一般的、抽象的に宣言し、同法の解釈運用の指針を示したものにすぎない。これをもつて、河川管理者が、右目的達成のために必要な一切の権限を有することを定めた、具体的な権限規定と解しえないことは、既述のとおり河川がそもそも公共用物であること及び河川法全体の構成からみて、明らかというべきである。すなわち、河川管理者の具体的な職務権限は、同法第一条、第二条によつて直接根拠づけることはできず、同法の個別的な規定により具体的に定められたところに従つて発生し、行使されるべきものである。したがつて、原告らの前記主張は失当である。

(二) つぎに、これまで認定説示したところによれば、訴外深沢らによる本件もじり漁は、多年にわたり伝統的に行われてきた漁法のひとつであつて、亡佐藤正一らの行つたボートによる川下りと同様、河川の自由使用の一形態であると解されるところ、このような河川の自由使用であつても、その利用行為に伴つて様々な危険や事故の発生することは、十分予想しうるところである。

しかし、自由使用相互間の衝突の問題は、利用者相互の関係を支配する私法的規律に委ねられるか、公物管理権とは別個の作用である公物警察権によつて規制されるべきものであり、自由使用に伴う危険ないし事故の発生防止及び既に発生した事故に対する責任の問題も同様であつて、河川管理者と利用者との関係を規律する公物管理権の問題とはならないものというべきである。したがつて、訴外深沢らが本件もじり漁を行うにあたり、河川の自由使用をする他の利用者に対する関係で何らかの落度があつたとしても、このことの故に河川管理者が管理責任を負うべきいわれはない。

3 かくして、被告国の機関である建設大臣が、富士川の管理者として、河川法第二六条・第二四条・第七五条ないしは第一条等の規定に基づき、訴外深沢らによる本件もじり等の設置を禁止制限すべき職務権限をもつていたことを前提に、河川管理の瑕疵又は任務懈怠を原因として、本件事故による損害賠償を求める本訴請求は、既にその前提を欠くものというべきであるから、進んでその余の点につき判断するまでもなく、理由がなく、棄却を免れない。

四被告静岡県の責任について

1  国家賠償法第一条第一項に基づく責任

(一)  静岡県内水面漁業調整規則は、漁業法及び水産資源保護法その他漁業に関する法令とあいまつて、静岡県における水産資源の保護培養、漁業取締りその他漁業調整を図り、あわせて漁業秩序の確立を期することを目的とし(第一条)、その目的を達成する方策の一環として、第二章に水産動植物の採捕の許可に関する規定(第五条から第二二条まで)を設け、その第五条において、「うげ」等の漁具によつて水産動植物を採捕しようとする者は、原則として知事の許可を受けなければならない旨定めている。そして、同規則第三四条によれば、右規定に違反した者は、六月以下の懲役又は(及び)一〇万円以下の罰金に処し、犯人が所有又は所持する漁獲物・その製品・漁船又は漁具その他水産動植物の採捕の用に供した物は、没収することができることとされている。また、同規則には、知事が直接違反行為を排除し、違反漁具類を撤去しうる旨の明文の規定はないけれども、違反行為の多発、継続等によつて、水産資源の保護培養及び漁業調整等右規則の目的とするところが実質的に阻害されている場合においても、知事は何らの措置も採りえず、ただ拱手傍観していなければならない、ということはないであろう。右規則の実効をあげるため、知事において必要かつ相当と認めるときは、刑罰権の発動を求めて、違反者を告発することもできるであろうし、さらには、違反者に対し告発すべきことを警告して、違反行為の中止及び違反漁具類の撤去を勧告し、説得する等の行政指導をすることも考えられよう。

ところで、もじりは一般に右規則第五条にいう「うげ」に内含されると解すべきである(かかる解釈については、原被告とも同意見である。)から、訴外深沢らが富士川の本件事故現場付近に本件もじり等を設置して水産動植物を採捕するには、知事の許可を受けなければならなかつたところ、同人らが長年にわたり無許可でもじり漁を行つてきたことは、当事者間に争いがなく、これに対して知事が何らの措置も講じなかつたことは、被告静岡県において明かに争わないから、これを自白したものとみなす。

(二) 原告らは、訴外深沢らが長年にわたり無許可でもじり漁を行つてきたのに、知事がこれに対して何らの措置も講じなかつたのは、違法な行政権限の不行使にあたり、原告らに対して不作為による不法行為責任を負うべきであるという。しかしながら、前叙のごとき行政指導は、事柄の性質上行政庁の自由裁量行為であるから、漁業調整規則に違反する事態が存在するからといつて、常にこれを行わなければならないものではない。のみならず、行政指導をなしうることは、原則として行政庁の権限であつて義務ではないから、知事としては、行政目的達成のためその手法のひとつとして、行政指導を行うことを考慮すべき場合であつても、これをしないことが直ちに違法となるものではない。知事において行政指導をすべきか否かの裁量を著しく誤まり、違反者に対して違反行為の中止及び違反漁具類の撤去等を勧告指導しないことによつて、漁業調整規則が水産動植物の採捕につき知事に許可権限を与えた意味そのものを無意義ならしめるような事態を招来し、水産資源の保護培養及び漁業調整につき利害関係を有する者が、知事に対して前叙のごとき行政指導を期待するのももつともであると認められる場合に、初めてその不行使が違法と評価されるに至るものと解すべきである。

しかるに、原告らは、この点につき、訴外深沢らが長年にわたり無許可でもじり漁を行つてきたことを指摘するにとどまり、知事が行政指導をすべきか否かの裁量を著しく誤まつたものと認めるべき事実については、何ら主張立証をしないから、知事が訴外深沢らの違反行為につき格別の措置を講じなかつたことをもつて、違法に権限の行使を懈怠したものということはできない。

(三) のみならず、漁業調整規則の目的は既に述べたとおりであつて、水産動植物の採捕に関する規制も、その目的を達成するために行われるものであり、とくに、うげ漁法の禁止は、稚漁も含めて水産動植物を無差別に濫獲することを防止するためであると解されるから、本件のごとき事故の発生防止は、その目的の範囲外のことに属する。すなわち、漁業調整規則の目的を達成するために必要有用な規制であつても、本件のごとき事故の発生防止に不要不適なものがあり、また、本件のごとき事故の発生防止に資する措置であつても、同規則の目的を達成するためには不必要なものもある。要するに、漁業調整規則に基づく知事の権限は、本件のごとき事故の発生を防止するために行使されるべく予定されているものではない。したがつて、知事が訴外深沢らの違反行為につき格別の措置を講じなかつたからといつて、このことと本件事故の発生との間には、仮に条件関係があつたとしても、法律上相当因果の関係はないものというべきである。

なお、原告らは、もじり漁を危険性のないものとして発展させるため、静岡県知事は、もじり漁をしようとする者に対して許可をするにあたり、夜間のみ漁をするようにするとか、もじりの大きさについてもある程度規制するとか、標識を立てる等の条件を付することができたはずだと主張する。そして、漁業調整規則第一一条は、たしかに、水産動植物の採捕の許可に制限又は条件を付することができる旨規定する。しかし、同条によれば、知事が右許可に制限又は条件を付することができるのは、「漁業調整上又は水産資源の保護培養のため必要があるとき」に限られるのであるから、本件のごとき事故の発生防止のため原告ら主張のような条件を付しうるかは、大いに疑問である。

(四)  かくして、静岡県知事が違法に権限の行使を懈怠し、これによつて本件事故を惹起させたことを理由に、国家賠償法第一条第一項に基づいて、被告静岡県に対して本件事故による損害の賠償を求める原告らの請求は、その原因を欠くものというべきであるから、その余の点につき判断するまでもなく失当である。

2  国家賠償法第三条第一項に基づく責任

被告静岡県が、河川法第六〇条第一項の規定により、その区域内における富士川の管理費用を一部負担していること は、当事者間に争いのないところであるが、前記三において検討したように、被告国は、原告らに対して、本件事故による損害を賠償すべき責任がないのであるから、国家賠償法第三条第一項の規定に基づき、被告静岡県に対して右損害の賠償を求める請求もまた、失当といわざるをえない。

五以上の次第であつて、原告らの本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官佐久間重吉 裁判官長嶺信榮 裁判官樋口英明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例